トト・ザ・ヒーロー [DVD評価]

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MOVIE評価(65点)

出演:ミシェル・ブーケ、ジョー・ドゥ・バケール、トマ・ゴデ、ギーゼラ・ウーレン、ミレイユ・ペリエ、サンドリーヌ・ブランク、フェビエンヌ・ロリオー
監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
本編:98分
1991年(ベルギー・フランス・ドイツ)

【「嫉妬」の真実に気付いたヒーロー】

 知る人ぞ知る、ジャコ・ヴァン・ドルマル監督のデビュー作。

 あのジャコ・ヴァン・ドルマルのデビュー作品ということなので、きっと一筋縄ではいかない複雑怪奇なドラマなのだろうな…と思いつつも、これまで、なかなか観る機会がなかった。と言うよりも、観る気が進まなかったと言った方が近いかもしれないが(笑)。

 一見するとフランス映画っぽい感じがする映画だが、中身もモロにフランス映画風だった。個人的にフランス映画は苦手で、あの独特な雰囲気と冗長で個性的な演出がどうもマッチしない。しかし、さすがに本作はドルマル作品だけあって、一味違っていた。(ちなみに本作はベルギー映画)

 老人ホームで暮らしているトマ老人は、赤ちゃんの頃、病院が火事になって、隣の赤ちゃんと取り違えられたことを記憶している希有な老人だった。トマ老人は、その取り違えられた赤ちゃんは、向かいの家に住む金持ちのアルフレッドであることも知っていた。トマ老人は、本来、自分が金持ちの家に生まれ育てられるはずが、運命の悪戯によって、人生を奪われた自分自身を受け入れることができずにいた。そんなトマ老人の人生の目的は、いつしかアルフレッドに復讐することになっていった。老人ホームを抜け出したトマ老人は、はたして無事に復讐を遂げることができるのか…。

 そもそも、赤ちゃんの頃の記憶が残っているという設定自体が、既に妄想の領域なので、トマ老人が覚えている記憶も真実であるかどうか判らない。本作は、そういう視点に立って観るべき映画であり、むしろ、記憶自体が思い込みに過ぎなかったと思って観た方が面白いかもしれない。人生における「もし…」を前提にしたストーリー作りは、いかにもドルマル風であり、デビュー作でもその片鱗は感じ取ることができた。『ミスター・ノーバディ』のシンプル版とも言えそうだ。



 現実と空想を織り交ぜたかのような(実際に織り交ぜているのだが)映像作りもまさしくドルマルで、どこか郷愁感を感じるような不思議な映画だった。少々、アクの強い作品ではあるが、3人の俳優がそれぞれ、トマ少年、トマ青年、トマ老人を演じており、否応無く、トマの人生に感情移入してしまう。

 この映画で描かれていたのは「嫉妬」という感情が、いかに人間の眼を曇らせるかということだったのかもしれない。「もし、ああなっていたら…」という願望を、「もし、ああなっていなければ…」という妄想に切り換えて、自らの人生を悔やみ、呪う主人公トマ。しかしトマは人生の最期で、人生の真実に気付いてしまう。「無意味な人生」だったと思っていた人生が「意味のある人生」に変化する。他人に対する「嫉妬」は自分自身の人生を滅ぼすということに気付いた時、トマの眼にかかっていた「嫉妬」という名の色眼鏡は剥がれ落ちる。そして、眼前に見えた世界は、実は煌めきの世界だったという話。

 何気ない地味なドラマの中に、ひっそりと人生の真実を描く、いかにもドルマルらしい作品だった。

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